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ゼラズニイとは?/ ディック

[ 536] The Wind's Twelve Quarters
[引用サイト]  http://www.terra.dti.ne.jp/~okawa/rz/RZindex.html

「或る朝記憶喪失状態で目を覚ました主人公コーウインは、影(シャドウ)と呼ばれるパラレルワールドを旅しながら自分の記憶を捜し求めます。
そして記憶を取り戻すと、この世界の真の中心であるアンバーとその王位奪回を目指して、幾つものの影を旅していくのです。
作品としては、大作故の多少のほころびもあるのですが、それでもゼラズニー魅力の全てが盛り込まれています。
特にクライマックスの壮大さはワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」を思い起こさせ、大作を読む喜びを感じさせてくれます。
ケルト神話は指輪物語の背景ともなっている神話で、お馴染みのエルフも人間がアイルランドに来る前に支配していたダーナ神族の末裔として登場します。
作品内には、ところどころ、それらしいモチーフが使われていて、今回、ビュジュアルストーリー紹介で使用したティルナノグス(ティルナノーグ)も、この神話での黄泉の世界の名前です。しかし、物語の基本背景はカオス・ロー対立型の世界で、それに雰囲気を沿える程度に使われているようです。
ゼラズニーを原書で読むのはかなりしんどいですから、早川書房さんが一日も早く刊行してくれることを望んでいます。
内容: コーウィンの息子マーリンが繰り広げる混沌の宮廷とアンバーを舞台としたヒロイックファンタシー_
「混沌の宮廷とアンバーの争いに決着をつけたコーウィン。しかし、その姿はその後忽然と消えた。彼と混沌の王女ダラの息子マーリンは、父の手がかりを求めて魔法に満ちた世界(シャドウズ)での旅を続ける。永遠の都アンバーを巡る新たなる陰謀と争い。秩序と混沌、アンバーのユニコーンと混沌のサーペント、その永遠の闘争に翻弄されながらマーリンは影の世界の旅を続ける。彼がその旅の終わりに見出すものは...」
寸評: まず初めに、まだ翻訳が出たわけではありません。期待した方ごめんなさい。というか現状を見ると出そうにもありませんので、今回私の読了記念に原書から紹介させていただきます(^^)。
  時間的には、オリジナルアンバーシリーズから数年後。コーウィンは、アンバーが混沌の宮廷に勝利した後失踪してしまいます。その息子マーリンは、父コーウィンの手がかりを探しながら、父のいた影「地球」で暮らしていました。その彼の元に送り込まれた刺客、いずこの影からともわからない幻獣は、マーリンのかつての恋人ジュリアを惨殺します。その日からマーリンの平穏に満ちた日々は終わり、魔法に満ちた影の世界の探索が始まるのです。  前シリーズと比較すると非常にヒロイックファンタシー色が強くなり、主人公マーリンも、剣一本で運命を切り開いたコーウィンと比較して、美しきヒロイン達と強大なパワーに振り回されていく感じです。前シリーズの雰囲気がハードボイルドだったとすれば、新シリーズはむしろエルリック的魔法世界でしょうか。  そして、このシリーズの新しい魅力もそこにあります。まず、混沌のログロスを源としてマーリンが魔法を使用するシーン、これがとにかくかっこいい。(漫画「ジョジョの奇妙な冒険」で初期のヒーロー達が波紋という力を使いますが、ご存知の方はあんなイメージです。)混沌のログロスとは、アンバーのパターンの対立物で混沌の力を象徴するものです。ログロスは迷宮として存在し、近づくものを絶えず狂気を誘います。しかし、完全な狂気に陥ることなくこのログロスを渡りきった者には、影をゆがめる混沌の力が与えられるのです。マーリンを覆う靄のような空間の歪み、それが幾重にすじとなって向かって伸びていき、強大な混沌のパワーが相手をゆがめ切り裂いていく...ストームブリンガーをもってバーサークするエルリックに匹敵するかっこ良さですね。  新しいヒロインも次々と登場し、ストーリーに謎を与えてきます。もちろん前シリーズに登場したコーウィンの美しき姉妹達、フィオナ、フローラ、ルウェラも登場し、ルーキーのマーリン君は結構いいように翻弄されています。まあ、マーリンという名前で登場したところに、最初からゼラズニーの多少皮肉な意図が隠されていたのでしょう。最後に自らの魔法の力により、少女ニムエによって本家のマーリンが幽閉されてしまうように...  オリジナルシリーズでいきなり王位につかされたランダムは、結構無事にアンバーを治めています。アンバーと混沌の宮廷の間には政治的な協約が結ばれており、現在は一応の休戦状態です。その間に入って休戦協約をまとめたのが、懐かしきビル・ロス氏だっていうのは笑っちゃいますが(弁護士恐るべし(^^!)。前シリーズではどちらかといえば言えば良い人であったヴァイアラが、ランダムより敬意を払われるクイーンになっているとこるなんかなんか、昔日の感です。  全体としては、前シリーズに背景として登場したアンバーと混沌の宮廷、そして影の世界がより深く掘り下げられている感じです。原書はAmazon.com等で比較的簡単に手に入りますから、アンバーファンの方は一度トライしてみてはいかがでしょう。 
背景世界:もちろん、主人公マーリンの名前の由来通り伝説のドルイド・マーリン伝説が背景になっています。マーリンはアーサー王伝説との関わりでのみ日本では有名ですが、元となったケルトの民間伝承やドルイド達の物語が抽出されて、一人のスーパードルイド・マーリンの話となったのだと思います。アーサー王伝説の中では強大な力を持ちながら、決して表に立って支配しようとしなかったマーリンですが、このアンバー世界のマーリンは運命の翻弄の後、異なった選択をしたようです。
私の見る著者最高傑作。 ジャンル的にはSciFiともいえますが、ネイティブアメリカンの神話(アニミズム)を土台にしたことで、
「引退した(ネイティブアメリカン)ナバホ族の狩人ビリーは、星星を巡ってあまたの異星獣を駆り集めたスタートラッカーであった。
彼は過激派による異星大使の政治的暗殺を防ぐため、かつて捉えた最大の敵、変身獣キャットを解き放とうとする。
最初に述べたとおり、私の見る著者最高傑作。 随所に散りばめられたナバホ族の神話と創作詩が、異星大使の暗殺を防ぐというSciFi的設定から、
次第に読者を神話と心の内への旅へと連れて行きます。 クライマックスではいつのまにか自分と主人公が神話のタペストリーの中に織り込まれていたことに気づくでしょう。
ネイティブアメリカンの神話は、ホピ族の世界終末の予言が話題になった程度であまり知られてはいませんが、実は我々日本人の神話と兄弟姉妹にあたる関係にあります。
かつてオールドモンゴロイドと呼ばれる一群の人々が太平洋を囲む大陸島々に住んでいました。日本では縄文人やアイヌ人であり、アメリカではネイティブアメリカンであったわけです。これらの人々共通する信仰は、世界は生きており、ありとあるゆるものは生命を持つというアニミズムと、それらの中の調和の中に生きることこそが、人間の喜びであるという信念です。
作品の中でビリーは未来世界まで生き延びてしまうことで、そんな自然や同族との調和から切り離され疎外されています。それは外部の変化のためだけでなく、ビリーの心の中に生じた新しい人格が行ったことでもあったのです。そして、かつての戦いの日々の象徴であったキャットを解き放つことで、そのことをはっきり突きつけられます。次第に現実世界でのキャットとの戦いは、かつて世界と一つに生きていた自分を取り戻すための、彼の心の中への旅へと変化していくのです。
ネイティブアメリカン達の狩人は自分の守護精霊見つけるために、ヴィジョンクエストという放浪を単身行ったそうです。
「妖精族の血を引く伝説の剣士デルヴィッシュ、かつて彼は、堕ちた大魔術師ジェレラクにより石像にされ魂は地獄をさまよった。
しかし、黒い鋼の馬ブラックを伴って彼が地獄より舞い戻った時、復讐を求めるデルヴィッシュの戦いが始まった。」
基本的に正統ヒロイックファンタジーであり、悪夢と詩とユーモアというゼラズニーの良いところの全て出た傑作です。
きちんと英雄と介添役の旅というパターンを踏んでおり、二人が交わす凄みのあるユーモアは、このシリーズに精彩を添えています。
また背景世界には、ゼラズニーの心象風景内の壮大な悪夢が次々と展開し、 これぞヒロイックファンタシーという醍醐味を味あわせてくれます。
世界背景は妖精族(エルフ族)や古き神神といったヒロイックファンタシー特有のもので、特に特定の神話との関係は見られないようです。
しかし、治療のため夢に入り込んだレンダーを待ちうけていたのは、見ることへの渇望に支えられた抵抗不可能な夢を操る意志の力だった。」
最も使われている世界はフロイト、ユング等の精神分析の世界です。 (夢の中で)抑圧された欲望が象徴として登場し、その意味を解き明かすという精神分析手法を、
SciFiらしく機械で視覚化したイメージとして示しています。 ここで描かれているシェイパーと患者の緊迫したやり取りというのは、
我々の心の中は根源的なレベルでは(他者から見れば)奇怪な私的幻想の世界であり、そのほんの一部の上層部のみが社会的に共有化され、
他者とのコミュニケーションが可能になっています。 言い換えれば、我々一人一人は、我々自身も知らない暗黒大陸を心の中に持っているのです。
患者は、その共有化された理性(自我)という名の蓋が崩れかかっている状態であり、それを必死に支えようとしています。
治療のためとは言え、そこに強引に割り込んでくる医師は、患者にとって強姦者であり、それゆえに強烈な緊張関係が二人の間に生まれます。
レンダーの遭遇する恐怖とはそうしたものであり、この作品の中で、そんな実際の心理療法でも起こりうる悲劇を見事に視覚化しています。
地球から着た第一世代達は転生を重ね、その科学技術を自らの手の中にのみ留めることで、後の世代人々の上に神として君臨した。
サムがその老獪さをいかんなく発揮して状況をひっくり返していくさまは、チェスの名勝負を見るような趣があります。
彼は一度として神であることを主張したことはなかった。が、いっぽう、神ではないと主張したこともなかった。
諸般の事情からして、どちらを認めても、何の得にもならなかったろう。そして、沈黙はかれの身のためになった。」
背景となっているヒンズー神話は、果てしないディーバ(神)とアスラ(悪魔)の戦いとして語られています。
作品に登場する死の神ヤマダルマは閻魔大王その人ですし、ブラフマンは梵天、クベラは毘沙門天、シヴァは大黒天・大自在天、
インドラ神は帝釈天と数え上げればきりがありません。 「百億の昼と千億の夜」の背景としている帝釈天と阿修羅の戦いといった仏教説話も、やはりディーバとアスラの戦いの一つにすぎません。
ヒンズー教とは、源初の宗教が持っていた純粋な狂気のパワーを色濃く残している神話であり、まさにインドの暑く濃密な生の香りを漂わせているともいえます。
そういう点では、主人公サムがヒンズー神権政治と対抗するのに、仏教を選らんだのはなかなかの深謀遠慮であるといえます。
実際のインドでは仏教は結局ヒンズー教に取り込まれてしまうのですが、 本作品ではサムの比類ないマキャベリズムによって違う結果を迎えるようです。
_「静止した地球、世界は昼と夜の二つに分けられていた。闇と魔法が支配する暗黒界、その七王の一人ジャックは影を支配する力を持った伝説的な盗賊であった。しかし、その彼が王の一人である不死大佐の依頼、ヘルフレームの奪取を引き受けたことからストーリーが始まる。つかまって首をはねれられるジャック、そう、彼は宿敵こうもり王のわなにはめられたのだ。しかし、暗黒界の住人は決して死なない。堆屍穴と呼ばれる地獄で何度でも蘇る。そして蘇ったジャックの誓ったものは、関わった全ての人間への「復讐」であった。ジャックの復讐の炎は、この世界の根幹をも揺るがし、そしてこの世界は...
寸評: まず、不死大佐やこうもり王の響きで引いてしまった人達(^^;。心配無用です。ゼラズニーが黄金パットを書くわけないじゃありませんか!むしろ、それを言うなら「ルパンIII世」オリジナルシリーズのカッコ良さに、シェークスピア張りの緻密な心理描写、そしてワーグナー風の壮大なカタストロフィーのミックスだと申し上げましょう。
主人公ジャック、かっこいいです。彼がわなによって殺され、蘇った後に復讐を始めるところなんか、オリジナルシリーズでルパンが銭形にゴム弾でつかまり、刑務所に入れられ死刑になる寸前に摩り替わって脱出するという回を髣髴させます。
恐らく、こういったアニメやコミックを連想してしまうところが、発表当初評論家筋から酷評された所以でしょうが、ピカレスク物のヒーローのダンディズムって味わい深いと私は思います。
背景世界: 直接の背景となっているのは、アメリカンコミックの世界を髣髴させる、過去のホラー作品群だと思います。検証はしていないので、なんとも言えませんが、私自身はなんとなくシェークスピアのハムレットあちこちで連想するのですが。
邦訳の表紙もそうでしたが、アーサー王伝説に関してはどうも映画「エクスキャリバー」のイメージは強力なようですね。
どちらかといえば核戦争後の地球という純SciFi的設定です。 完成度としては光の王の方が高いでしょう。
この作品ではよりストレートに大人になるとはというテーマを、 魅力溢れるモラトリアム青年キャシディーを通して描いています。

 

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